出版物

「ピアノを弾く少女」の誕生~ジェンダーと近代日本の音楽文化史 青土社 2023年 


『「ピアノを弾く少女」の誕生~ジェンダーと近代日本の音楽文化史』

当フォーラム結成初期(1990年代)からの会員で、2008年から2020年まで代表を務めた玉川裕子さんが、このたび、長年にわたって温め、研究を重ねてきた成果をまとめ、青土社より新著として出版しました。


本書は、「日本という文化圏で生まれた自分が、なぜ異なる文化圏で発展した西洋音楽をやっているのだろうか?」との自身の疑問を出発点とし、「ピアノを弾く女性」を手掛かりとして、近代日本でピアノが「文化資本」となった経緯、和洋二種の音楽文化が接触して一方が優勢になっていった過程、そして音楽文化がジェンダー規範とどのように結びついていったかを明らかにしていくもので、3部6章と二つのIntermezzoから成り立っています。


折に触れて当フォーラム例会で発表して問題意識を発展させて、まとめ上げた渾身の力作です。多くの方々にお読みいただければ幸いです。


詳細は、出版社のホームページをご覧ください。(文・市川啓子)



 


ポリーヌに魅せられて 梨の木舎社 2023年 

『ポリーヌに魅せられて ジョルジュ・サンド ツルゲーネフ ショパン サン=サーンス リストたちが讃えた才能』


当フォーラムを立ち上げ、2007年まで長年にわたって代表を務めて当会の土台を築いた小林緑さんが、このたび梨の木舎より新著を出版しました。ポリーヌ・ガルシア=ヴィアルド研究の集大成であり、彼女について日本語で読む事のできる大変貴重な著作です


何よりもポリーヌに対する愛に溢れた1冊です。
同時に、19世紀音楽史の常識にさまざまな問いも投げかけられています。
是非、多くの方にお手にとっていただければと思います。

梨の木舎のHPもご参照ください。(文・玉川裕子)


また、「長周新聞」に掲載された書評を下記からご覧いただけます。


 


クラシック音楽とアマチュア W.W.コベットとたどる二十世紀初頭の音楽界 青弓社 2018年 

当フォーラム会員 西阪多恵子による書籍

 アマチュア音楽家コベットは、イギリスの裕福な男性実業家=男性社会の成功者。プロの男性中心の音楽界で、コベットはアマチュアの誇り高く、室内楽の喜びを広く伝えようと、女性音楽家たちとも豊かな関係を結んでいく。
 アマチュアはプロに劣り、女性は男性に劣る。よって、プロの女性はアマチュア並み。ではアマチュアの男性は? ―― 偏見の優劣軸は2本。男性アマチュアのコベットは、その交錯点から出発し、方々で、女性と男性、アマチュアとプロをつないでいった。コベットだけではない。多くの音楽の「アマチュア=愛する(アマーレ)者」たちが、女性も男性も、時に葛藤を生じつつ共感しあい、協働した。そのエネルギーは驚くほどである。それ以上に驚くのは、これほどエネルギッシュな営みが、今まで歴史のひだに隠れていたことである。(文・西阪多恵子)

 

クラシック音楽と女性たち 青弓社 2015年

 当フォーラムは、2013年に結成20周年を迎えました。その前年より、これまで積み重ねてきた成果を形にしようという機運が高まり、出版企画が持ち上がりました。それから足かけ4年、このたびようやく会員有志による書籍の出版にこぎつけることができました。女性のさまざまな音楽実践に光をあてることで、文化としての音楽の歴史に新たな光を投げかけるものと自負しています。多くの方々にお読みいただければ幸いです。  

なお、本書を出版してくださった青弓社のHPの「原稿の余白に」というコーナーに、編著者による本書にまつわる小文が掲載されています。

 バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパン、チャイコフスキー……誰もが目にしたことのある名前が並ぶ従来の西洋音楽史では、男性の、それももっぱら作曲家だけが語られてきた。だが、時代や社会の制約を受けながらも、女性たちも積極的に作曲や演奏などの音楽実践にたずさわり、音楽文化の形成に深く関与していた。現代では女性の音楽家の活躍がめざましいが、なぜ過去の実践は語られることがないのだろうか。 本書では、男性作曲家中心の視点で描かれてきたクラシック音楽史が見落としている女性の豊かな音楽活動に光を当てる。劇場・公開演奏会・学校・協会・家庭などの「場」というトピックスを設定し、それぞれの場における女性の活動にフォーカスすることで、社会的な性差を意味するジェンダーが音楽文化でもはたらいていることを明らかにし、歴史に埋もれた女性音楽家たちの営みを浮き彫りにする、もう一つのクラシック音楽史。

オペラのメディア 近代ヨーロッパのミソジニー 水声社 2014年

当フォーラム会員・梅野りんこによる書籍。

17世紀から18世紀にかけて、フランスでは魔女メデイアについてのオペラや戯曲が最低でも十作作られた。これはルイ14世が絶対王政を誇った前後の時代である。ギリシャ神話中のメデイアは夫に裏切られ、恋仇とその父王、夫との間に生まれた二人の息子を殺害し、復讐を果たした。なぜ厳しい身分制社会、家父長制社会の中で、王や夫に反逆する魔女が何度も舞台化されたのか。本書は四つのオペラ台本を分析することで、 ヨーロッパの近代に特徴的に表れるミソジニー(女嫌い)を浮き彫りにしたものである。現代の基礎を形作った近代の源流に遡ることで、現代社会に蔓延する暴力や性についてより深い理解を得たいとの思いが研究のきっかけとなった(文・梅野りんこ)

クララ・シューマン 春秋社 2014年

当フォーラム会員の玉川裕子による翻訳書。
女性職業音楽家として世紀を生き抜いたクララ・シューマンの生涯が、コンパクトながら、過不足なく描き出されています。楽譜とともに伝記を通じて、プロフェッショナルな女性音楽家のパイオニアたるクララ・シューマンの音楽と人生を、一人でも多くの方に知っていただければと思います。

クララ・シューマン ピアノ作品全集 全2巻 春秋社  2014年

フォーラム会員 川嶋ひろ子による世界音楽全集・新校訂版シリーズ「クララ・シューマン ピアノ作品全集」(全2巻)
 自筆譜や初版譜などの豊富な資料とコンサートやCDリリース等で積み重ねた演奏法研究、現地での綿密な調査などによりまとめられ、未出版楽譜を含むクララ・シューマンのピアノ作品の全容が年代順に収録されていて、彼女の全貌を知る待望の書です。本書には運指やペダル、ディナーミク、注釈等が丁寧に記載され、巻末には校訂報告及び演奏上の助言、年譜なども収められていて、ピアノ教育者、学生にとって最適な書といえます

作曲家・吉田隆子 書いて、恋して、闊歩して 教育史料出版会 2011年

 当フォーラム会員 辻浩美による書籍。

 大正・昭和の激動期を、反戦と女性解放を掲げて生きた作曲家・吉田隆子(1910-56)。時代の波に屈せず、自由奔放に生き、プライドを持って新しい音楽の道を突き進んだ隆子の生涯を追った。新たに発見された「病床日記」、楽譜《カノーネ》《蚤の唄》収録、CD(「生誕100年記念コンサート」より6曲抜粋)付き。


 音楽関係者だけでなく、どなたにもさらりと読み進められるよう、専門的な記述は控え、当時の社会や音楽の動向も踏まえながら、吉田隆子の生涯と音楽を追ったものです。巻末に楽譜2曲とCDを付けましたので、読んで、弾いて、聴ける一冊として、楽しんでいただけると幸いです。(著者・辻 浩美)

フェミニン・エンディング 新水社 1997年

画期的な音楽のジェンダー論、翻訳書
 当フォーラムでは90年代に、アメリカの音楽学者スーザン・マクレアリの画期的な論考『フェミニン・エンディング』を共同で訳出し、新水社から出版しました。ぜひご購読ください。